印刷用pdfファイル(A4/モノクロ)はここをクリックしてダウンロードしてください☆
2013年9月7日(日本時間)、ブエノスアイレスで開催された国際オリンピック委員会(IOC)総会の招致演説で安倍晋三首相は「東京電力福島第一原発について私は皆さんに約束する。状況はコントロールされている。決して東京にダメージを与えない。オリンピックが安全に行われることを保証する。」(要旨)と世界に向かって発言しました。
更に招致演説後の記者会見で、安倍首相は汚染水問題について「結論から言って全く問題ない。事実を見てほしい。汚染水による影響は福島第1原発の港湾内の0.3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされている。健康問題については、今までも現在も将来も全く問題ないと約束する。日本の首相として(子どもたちの)安全と未来に責任を持っている。日本に来るアスリートにも責任を持っている。その責任を完全に果たす」(要旨)と発言しています。
2020年オリンピック・パラリンピックの開催地は東京に決まりましたが、国際原子力事象評価尺度(INES)の暫定評価を「レベル1(逸脱)」から「レベル3(重大な異常事象)」に引き上げられているなかで、今も続く汚染水漏れに対して「状況はコントロールされている」と断言してはばからない安倍首相の異常な発言をIOCの委員たちが推察できなかったのは残念でなりません。
更に、9月19日、安倍首相は福島第一原発を視察後「汚染水の影響は湾内の0.3平方キロメートル以内の範囲で完全にブロックされている」と改めて強調しましたが、自らの発言を否定する当日の「重装備の姿」は哀れでした。
これに対し、9月13日に東電の山下和彦フェロー(技術顧問)が「コントロールできていない」と発言し、政府との認識の違いも表面化していますが、その一方で、国会参考人招致された東電広瀬社長は、安倍首相との認識の差はないと述べ、東電内での見解の相違を露呈しています。
放射能汚染水対策に至っては、新たにタンクから汚染水が漏えいする事態も起きています。後手後手に回る汚染水対策は打つ手がなく「完全にブロックされている」とする汚染水は留まることを知らず、今日も海に流れ続けています。
安倍首相はオリンピックを誘致せんがために日本国民はおろか、世界に対しても「ウソ」をつき続けるなら、日本の国際的信用度は地に落ちることになります。すでに海外のマスコミからは安倍首相の発言に対して批判が沸騰しています。
しかし、安倍首相は国際的な場で「状況はコントロールされている」と豪語したその舌の根も乾かない10月6日に、今度は「科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム(STSフォーラム)」で「汚染水処理が難航している東京電力福島第1原発事故への対応について、みなさんの知恵と専門知識を必要としている」と国際的な協力を求めています。安倍首相の場当たり的な発言は、ますます国際的信用度を落とすことになりますが、まだそのことに気づいていません。
福島原発事故の収束に政府が本腰を入れないのは、2011年12月に当時の野田佳彦前政権が表明した原発事故の「収束宣言」をしたことが根底にあります。安倍首相は2013年3月13日衆議院予算委員会において「地域の話を聞けば政府として収束といえる状況にない。安倍政権として収束という言葉を使わない」と述べていますが、5月15日参議院予算委員会で「政府一丸となって対応し、できる限り早い段階で再稼働を実現したい」と述べ、その後各国に原発の売り込みを繰り広げています。
安倍首相に原発事故が収束していないという認識があるならば、最優先で収束に取り組むべきで、再稼働などは論外であることは明らかですが、収束より再稼働を優先し、加えて輸出を推進する姿勢は「無責任で恥知らず」と言わざるを得ません。
今も15万人もの福島県民が自宅に戻れず避難生活を送っているにもかかわらず、福島原発事故はとっくにコントロールされているとする今回の安倍首相の発言は、故郷を奪われた避難民を愚弄して顧みない冷酷非道なもので、決して容認することはできません。
私たち反原発西武線沿線連合(反西連)は以上の点をふまえ、安倍首相並びに日本政府に対し、次のことを強く求めます。
1、原発事故及び放射性高濃度汚染水の漏えいに対して「状況はコントロールされている」とした一連の発言を撤回すること。
2、汚染水漏えい対策に全力を挙げて取り組むこと。
3、「原発事故収束宣言」を改めて撤回すること。
4、原発の再稼働を絶対に行わないこと。
5、原発輸出を行わないこと。
6、福島第一原発事故で被害を受けた方たちに対して、十分な賠償と補償をすること。
2013年10月22日
反原発西武線沿線連合(反西連)